2012年01月25日
賢治のオノマトペ
霧雨けぶる青葉通りをひさしぶりに歩いたが、寒気が肌にしみて踏みしめる足元がいささかおぼつかない。先週末、仙台で行なわれた全国図書教材協会主催の「ことばのフォーラム」に出席してきた。 絵本作家いわむらかずお氏の講演を中心に東北ゆかりの文化人の方々のパネルトークなどが行なわれたいへんな盛況であった。いわむらさんの「私の原風景」のお話は、氏とほぼ同時代をともにした私には、こころの弦に強く響くところが多か...
2012年01月06日
ふるさとの春
ひさしぶりにお正月で帰ってくる長男に何を食べたいか尋ねたら一言「煮物」とメールしてきた。「煮物」というのは、家庭によってみな微妙に味がちがうから、古巣に親しむのにいちばんふさわしい食べ物なのかもしれない。よくいう「おふくろの味」である。このごろはスーパーでも、実にたくみに「おふくろの味」を演出していて感心するが、やはり味が濃すぎたり甘すぎたりで、育った家庭の味とはかなりちがうのである。あたりまえの...
2011年12月22日
世間胸算用
師走といい極月と言っても、季節感の希薄になってきた近年では西鶴の時代のような切迫感を持たなくなってきているが、ただ懐中の侘しさをかこつ心持ちだけは時を超えて共通しているように思う。 昭和20年代の頃には暮れになるときまってラジオでは落語の「掛取り」や「芝浜」をやっていた。毎年のように流れるこの話を聞きながら借金取りというのはなぜ晦日にしかやってこないのか、と子ども心に不思議でならなかった。近松の浄...
2011年12月02日
クラインガルテン
もう冬支度を終わりかけた信州松本の旧四賀村を訪ねた。好天に恵まれたから、さほどに寒さを感じることもなく短い滞在を楽しむことができた。 坊主山クラインガルテンのラウベ(木小屋)にもう16年にわたって間歇的に棲みつき、お洒落な農作業をつづけている、フリーライターの岡崎英生君の厄介になったのである。 岡崎君は40年も前に劇画「しなの川」の原作者・作詞家としてマスコミに登場して以来、数々の名作をものし...
2011年11月30日
愛宕山(あたごやま)
大震災のとき、いそいで愛宕山に駆け上った人がいた。NHKが初めて電波を発信したことで知られるあの山である。その機敏さにはつくづくと感心する。前にも書いたように私は、東京タワーがゆさゆさ揺れている姿を6階の窓から茫然と見ていただけだから、とてもこんなことは思いつかない。考えてみれば、「芝浜」の噺にあるとおり、この港区芝のあたりは海浜だったのであるから、こういうときに液状化現象が起こったり、津波が攻め...