2009年04月14日
春、小三治
今年は、例年になく春先の気温が低かったせいであろう、いつもなら順繰りに咲く庭の花が、いっせいに咲きそろっている。ソメイヨシノと八重桜が同時に開花するなどというのも初めて目にする光景である。木蓮、ハナミズキ、二人静、都忘れ、シャガ、踊子草などが、まるで競うかのように、狭い土地を彩っている。 土曜の夕刻、せわしない日常のあいだを縫うようにして練馬の文化ホールで、「小三治一門会」を聴いた。 柳家小三治さ...
2009年03月03日
勧進帳(続)
銀座の歌舞伎座が建てかえられるそうである。 その文化財としての姿を惜しむ人たちから、反対の声もあるようだが モニュメントとしての観光建造物とちがって、 実際に二千人近い観客が、常時芝居をたのしむ場所なのだから 耐用年数がすぎてくれば、危険を回避するのはあたりまえのことだろう。 庭の早咲きの梅が満開となり うらうらとした陽気の土曜の夕べに その歌舞伎座で、「勧進帳」を観た。 中村吉右衛門の弁慶、尾...
2009年02月19日
勧進帳
ときどき各地で講演を頼まれる。 だれでもそうだろうが、 若い頃、 初めて壇の上に登ったときは 私も前に座っている人の顔がかすんでみえたものである。 よく言われることだが、 用意してある水を飲む余裕など、とてもない。 前日までに用意して、 きちんとタイムキーピングした原稿を 一字一句洩らさずにしゃべる努力をするのが、精一杯であった。 しかし最近は、一時間の講演だと、 少なくとも二回はのどをうるおすゆ...
2009年01月26日
下田の松陰
昨年の暮れ、ずいぶん押し詰まってから 伊豆下田の温泉宿をたずねてきた。 ここのお湯は、海が近いせいなのか少し塩分を含んでいるようで、 修善寺の温泉などより、私には心地がいい。 宿の近くに、吉田松陰がかくまわれていたという藁葺きの家が そのまま保存されている。 彼が皮膚病を治したという湯槽もそのままである。 この家の主人であった村山行馬郎という人は漢方医だったようだ。 家のつくりそのものはつつましや...
2009年01月05日
蝋梅
「門松は冥途の旅の一里塚 めでたくもありめでたくもなし」(狂雲集) 一休禅師が元旦に詠んだとされる戯れ歌である。 いかにも一休さんらしい皮肉な言い回しであるが、 この悟達の禅僧も臨終の際には「死にとうない」とつぶやいたと言う。 正月には成田山にお参りすることにしている。 荘厳な本堂の裏手に、美しい森林公園が広がっていて、ここを散策するのが 参詣のときの楽しみである。 この時期には、深山幽谷を象った...