2012年04月18日
西日礼讃
子どもの頃は、西日のさす部屋が好きではなかった。遊びつかれて帰ってきて、バタンと臥せってそのままの形で眠り込んでしまい、気がつくと部屋いっぱいに西日がさしている。そんなときは、寝ぼけ眼をしばたたきながらもなんともいえぬ寂しいような哀しいような変な気分になったものだ。その季節がどんな時季であったのかよくわからないが、とくに冬から春にかけては憂鬱な気分になることが多かったように思う。大げさに言えば「暗...
2012年03月22日
吉本隆明のこと
3月16日午前2時13分吉本隆明逝去、87歳。60年代前後に青春をおくった世代にとって、これほど大きな影響力を持った日本人はきわめて少ないと思う。私も一応そのひとりではあるのだが、ただ吉本の思想や文学について語るのは私の任ではないので、ここでは個人的な思い入れのようなものに触れてみたい。吉本は、思想家であるよりなによりまず詩人であった。詩的表現が彼の論理をしばしばわかりにくくしていたが、またそれが...
2012年03月12日
あの日から...
もう1年になるのか、とあらためて思う。昨年の今頃はすでに、庭の梅は三分咲きにほころんでいた。気の早い夫婦の鶯が、花蜜を吸いたくて、開きかけの小さな蕾の奥を覗き込むように首をかしげてみせていたものである。春の歓びが、年々老いを養うわが体内にも、そこはかとなく芽生え始めていた矢先の、あの大震災であった。今年は紅梅も白梅も、まだかたい蕾のままである。雨が降るたびにひどくおびえる友人がいる。九州に移住して...
2012年02月21日
巣作りの季節
書斎の西側の窓の雨戸を、冬の間中ずっと締めたなりにしておいたことがある。西日を避ける意味と、冬のあいだ部屋の温度を一定に保つのに効果があるような気がしたからだ。たしかにその効果はあったように思うが、少しばかり厄介な問題も抱えてしまった。まったく気づかなかったのだが、戸袋にヒヨドリの夫婦が巣を作ってしまったのである。締めっきりとはいいながら、時折は開閉していたのだから、まさかあの大きなヒヨドリが巣を...
2012年01月25日
賢治のオノマトペ
霧雨けぶる青葉通りをひさしぶりに歩いたが、寒気が肌にしみて踏みしめる足元がいささかおぼつかない。先週末、仙台で行なわれた全国図書教材協会主催の「ことばのフォーラム」に出席してきた。 絵本作家いわむらかずお氏の講演を中心に東北ゆかりの文化人の方々のパネルトークなどが行なわれたいへんな盛況であった。いわむらさんの「私の原風景」のお話は、氏とほぼ同時代をともにした私には、こころの弦に強く響くところが多か...