「サスペンダーの独り言」ホーム

2009年02月19日

勧進帳

ときどき各地で講演を頼まれる。 だれでもそうだろうが、 若い頃、 初めて壇の上に登ったときは 私も前に座っている人の顔がかすんでみえたものである。 よく言われることだが、 用意してある水を飲む余裕など、とてもない。 前日までに用意して、 きちんとタイムキーピングした原稿を 一字一句洩らさずにしゃべる努力をするのが、精一杯であった。 しかし最近は、一時間の講演だと、 少なくとも二回はのどをうるおすゆ...

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2009年01月26日

下田の松陰

昨年の暮れ、ずいぶん押し詰まってから 伊豆下田の温泉宿をたずねてきた。 ここのお湯は、海が近いせいなのか少し塩分を含んでいるようで、 修善寺の温泉などより、私には心地がいい。 宿の近くに、吉田松陰がかくまわれていたという藁葺きの家が そのまま保存されている。 彼が皮膚病を治したという湯槽もそのままである。 この家の主人であった村山行馬郎という人は漢方医だったようだ。 家のつくりそのものはつつましや...

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2009年01月05日

蝋梅

「門松は冥途の旅の一里塚 めでたくもありめでたくもなし」(狂雲集) 一休禅師が元旦に詠んだとされる戯れ歌である。 いかにも一休さんらしい皮肉な言い回しであるが、 この悟達の禅僧も臨終の際には「死にとうない」とつぶやいたと言う。 正月には成田山にお参りすることにしている。 荘厳な本堂の裏手に、美しい森林公園が広がっていて、ここを散策するのが 参詣のときの楽しみである。 この時期には、深山幽谷を象った...

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2008年12月08日

泥鰌鍋

深川の高橋は、大江戸線清澄白河からすぐである。 その名のとおり、この橋は道からいちだんと高いところに架かっている。 ここいらは、下町の中でも岩崎邸や芭蕉記念館など、名所の多いところだが 高橋が架かっているのは江戸期に掘られた小名木川という運河の上である。 この高橋は「たかばし」と濁って読む。 今でも夕刻、橋のたもとにたたずんでいると、藤沢周平作品の江戸下町の情緒を彷彿させる風景が浮かび上がってくる...

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2008年11月11日

銀座のマエストロ

ときどきジャズライブに行く。 とくに、心理的にタイトな仕事が何日もつづいた土曜の夜など、 ビリビリした神経の火照りをおさめるには、酒など飲むより ピアノやベースの快いリズムに心身をゆだねるのが 私にとってはいちばんの処方である。 18歳の頃だっただろうか、 新宿の「ラセーヌ」という喫茶店(今はもうないが)に連れてゆかれ、 そこで初めて、スリーピィの名で、すでに世界的名声を得ていた松本英彦のナマ演奏...

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