2011年02月28日
春風影裏に...
蹲(つくばい)のまわりでシジュウカラのタキシードを誂えたような姿が目立つようになった。雑草のなかを飛び歩いて、せっせと虫を掘り返すツグミの濃い茶羽織が濡れてみえる。地味で深い色合いの鶯の夫婦もまたやってきた。冷たい空気の薄い幕をわずかにひらいて春は確実に、小さな庭に降り立ってきているのだ。 春が近づいてくるといつも思い出すのは「電光影裏に春風を斬る」という言葉である。 この鋭い響きを持つ言葉に私は...
2011年01月20日
藪柑子(やぶこうじ)
歳の暮に、植木屋の店先で藪柑子の小さな鉢をみつけた。 落語「寿限無」の、あの長ったらしい名前は、わが子の長寿を願っておめでたい文句を全部くっつけてしまったものだが、その中に「ヤーブラコウジブラコウジ...」というのがある。これが藪柑子である。お正月の縁起物に、この赤い実が飾られているのをよく見かけるが、つまりはおめでたい植物なのである。 柑子というのはミカンのことである。葉っぱがミカンに似ているの...
2011年01月13日
リチャード三世
知り合いの方がやっている劇団が、ON THE ROCKSの名前で「リチャード三世」を新春早々に合同公演するということなので池袋の劇場に行ってみた。 この芝居をいちばん最近に観たのが、蜷川幸雄演出の日生劇場だったから、それからもう十年にもなるわけだ。日本の俳優は悪役がうまいとよく言われるが、このときの市村正親のグロースター公もなかなかの名演であった。先代の勘三郎が演ったリチャード三世というのを、残念...
2010年12月21日
魔笛(または夜の女王のアリア)
師走に入ってまもない土曜の夕べ、上野の文化会館の大ホールでワルシャワ歌劇団のオペラ「魔笛」を観た。去年の冬、このポーランド国立歌劇団の「ドン・ジョバンニ」を観たのだが、これが意外なほど素晴らしかったので、今度も同じモーツアルトを聴く気になったのである。 若い頃、小林秀雄の一連の「モオツアルト」の著作に入れ込んだせいで、ずいぶんこれらのオペラレコードを聴き込んだものだ。私の「魔笛」のレコードはLP盤...
2010年12月15日
土竜の冬構え
今朝起きてみたら、庭の真ん中に大きな土の山が3つもできていた。直径50センチ、高さ30センチほどもある土饅頭がポコポコ並んでいるのである。はじめてお目にかかる奇観に息を呑んでいると、「モグラが大活躍ね」と家人はこともなげに言う。 なるほどモグラであったか。聞けば、いつもは樹木の根方あたりを掘りかえしているので気づかなかっただけなんだそうだ。それにしても芝生のど真ん中にこれだけの丘陵を築くのはなまな...