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第4話「アンタの心にゃ、寄生虫が棲んでいる!」の巻

●草原最強の虫に背後から

 

キリ助「いつもの売り方だと強引過ぎるのかな? お客さんに買ってもらうにはちゃんとお願いをしないといけない。よーし、今日は『お願い作戦』でいってみるか。さて、どこかにお客さんはいないかな」

 

クモ「いやー、今日はエサがなかなか見つからないな。こういうときこそ落ち着いて、音がしないように歩いて、背後から『ガバッ!』と襲わなきゃ」

 

キリ助は、ひとり言を言っているクモを見つけ、早速大きくジャンプして、クモの前に立ちました。

 

キリ助「クモさん、こんにちは! 実はお願いがあります。ボクの歌を買って下さい。お願いします。お願いします。お願いします。お願いします。お願いします!」

 

クモ「うるせーよ! 人がせっかく静かに歩いてたのに、オメーが大きな声を出すから、オレの存在がみんなに丸わかりじゃねーか!」

 

クモは毒のあるキバをむき出しにして怒りました。

 

キリ助「わー、ごめんなさい~」

 

キリ助はびっくりして、その場から一目散に逃げました。まわりの虫たちはキリ助に感謝し、1曲ぐらいは聴いてやろうと思っていたようですが、そのときキリ助の姿はもうありません。

 

この日、キリ助は出会った虫たちに『お願い作戦』で、歌を買ってもらおうとしましたが、まったく効果がなく、誰も買ってくれませんでした。陽が傾きかけた頃にはキリ助は歌を売るのをあきらめていました。

 

キリ助「おかしいな。こんなに努力してるのに売れないなんて。一体何が悪いんだろう。なんか今日はスランプみたいだ。こんな日はいくら努力しても無駄。帰って "モンハン"やろっと。クモさん張りの仕掛けを用意しよう」

※著者註:モンハンとはカプコンから発売されている人気ゲームソフト「モンスターハンター」のこと。

 

ガサッ! 

 

そのとき、キリ助は背後に気配を感じました。背筋に冷たい汗が流れます。恐る恐る振り返ると、そこには草原で最強の昆虫カマキリが、大きな鎌を振り上げ仁王立ちをしています。

 

キリ助「あわわわ......」( ;゚ロ゚)

 

捕食態勢をとるカマキリの前に、キリ助は逃げることはおろか声を出すことすらできません。キリ助は目をつむり覚悟を決めました。

 

●えっ、ゾンビになったカマキリが!?

 

キリ助(......あれ?)

 

カマキリは仁王立ちのまま動く気配がありません。目もどこか生気がなくうつろです。キリ助はカマキリに顔を向けたまま後ずさりをはじめました。

 

カマキリ「......ねぇ」

 

キリ助「は、はい!」

 

キリ助は、裏返った声で返事をします。

 

カマキリ「この辺に、池があったら案内してくれるぅ~?」

 

キリ助「こここ、こっちです」( ;゚ロ゚)

 

カマキリ「池♪ 池♪ どこだい? こっちにイケー♪ ひゃっほー!」

 

カマキリは鎌を振り上げたまま、キリ助が案内をするほうへ、何かに操られているかのようについてきます

 

キリ助(どう考えても様子がおかしいぞ......)

 

やがて、キリ助たちの前に大きな池が見えてきました。

 

カマキリ「イケてる池を発見~♪ 全身、前進、もーちょっと♪」

 

カマキリは案内しているキリ助を追い越し、池のなかにザブザブ入っていきます。

 

キリ助「あのカマキリ、水でも飲むのかな?」

 

カマキリ「ヒーッヒッヒ! 池ってサイコー! 超キモチー!」

 

カマキリは池に吸い寄せられるかのように深みへ向います。キリ助はそんなカマキリが溺れてしまわないのかハラハラした気持ちで見ていました。すると......。

 

カマキリ「......グァー! 溺れる!! 誰か、助けてくれーっ!!!

 

キリ助には何が起きているのかさっぱりわかりません。呆然として見守るだけです。やがて、カマキリは水没していきました。

キリ助は恐怖に震えています。でも、何が起きたのか確かめたくなり、水辺に近づきました。

 

キリ助「何がどうなっているの?」

 

しばらく池の水面を見ていると、1本の細長い茎のようなものが流れてきました。キリ助はそんなものに気は止めず、カマキリが沈んだあたりを見つめています。

 

 

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●ゾンビ・カマキリを操る正体

 

ピュン!

 

キリ助「わわわ、何だ? キモチワルー」

 

先ほどの長細い茎のようなものが、キリ助の首に巻きついてきました。

 

茎「あら、さっきのキリギリスちゃんじゃない。何してるの?」

 

キリ助「『さっきの』って? ボク、キミのことなんて知らないよ」

 

茎「アンタって鈍いわね。さっき池の場所を聞いたでしょ」

 

キリ助「はっ!? さっきのカマキリ?」

 

茎「そうよ。アタシはカマキリのお腹に入ってカマキリをコントロールしてた、パラサイト(寄生虫)のパラ子ってゆーの」

 

キリ助「えっ!?

 

パラ子「ちなみに特技はパラパラよ」

 

キリ助「あのーパラ子はとっても体が長いね。どうやってカマキリに入ったの?」

 

パラ子「アタシはハリガネムシなの。カマキリのお腹に入り込んだ春先は、数ミリくらいだったのよ。でもね、お盆とかに"キセイ"すると、ついつい食べ過ぎて大きくなるじゃん? それと一緒で大きくなっちゃった。ふふ」

 

キリ助「一緒か?」(-_-;)

 

ハリガネムシは最初ヤゴのような水中で生きる昆虫のお腹で育ちます。ヤゴが成虫になって地上に出たとき、カマキリに食べられると今度はカマキリのお腹に移って育ちます。カマキリは大きなもので体長は約10cmになりますが、その中に入っているハリガネムシはなんと40cm以上にもなります。

 

キリ助「ところで、パラ子がカマキリを操ってたって本当?」

 

パラ子「あらホントよ。アタシって水の中でダーリンを見つけて産卵するの。だから、カマキリには池に行ってもらわないとお腹から出られないから困るわけ。カマキリは泳げないから死んじゃったけどね。テヘッ!」(^^)

 

キリ助「テヘッじゃないよ。"操る"だなんて、キミは恐すぎ。人の体に住みついて自分の思う通りにしようだなんて。カマキリはゾンビみたいな顔してたよ」(-_-;)

 

●人の心には寄生虫が棲んでいる

 

パラ子「アタシのことを"自己中"みたいに言うけど、そういうアンタはなまけ者じゃん! 何がモンハンよ。アタシのことを気味悪がるけど、アンタだって寄生されているようなものじゃない!」

 

キリ助「えっ、ボクのお腹にもキミの仲間が入ってるの?」

 

パラ子「そんなことは知らないわ。でも、間違いなくアンタの心には寄生しているものがいるわね」

 

キリ助「......」 <( ;゚ロ゚)>

 

パラ子「アンタの弱い心よ。『一生懸命頑張ろう』って決めても、成果が出なければすぐにもうひとりの弱い自分が出てきて、『あきらめちゃえ』って誘うでしょ?」

 

キリ助「確かに今日のボクは......」

 

パラ子「別にアンタだけじゃなくて、多くの人が『もうひとりの自分の声』に負けてるわ」

 

キリ助「そういう意味では寄生されてるのと同じかも。ところで、どうやったら、もうひとりの自分に負けなくなるのかな?」

 

パラ子「そんなの簡単よ。アタシがアンタのお腹に"キセイ"して、コントロールしてあげる!」

 

キリ助「自分で何とかしたほうがよさそうだね」(^^;)

 

 

 

絵/山元かえ

 

※お話を作る背景になった虫の詳しい生態の話などは、著者のホームページに載せてあります。興味のある方はごらん下さい。http://www.nextstandard.jp/category/1264785.html

 

 







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著者プロフィール

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齊藤正明
さいとう・まさあき