第十二話 「目指せ、サカカジ!」後編
それから「スナック玉ちゃん」は月一の開催になった。だから毎月、必ずサカゼンさんに伺ってマスター衣装を一着づつ購入させていただいている。
そこでオレは、その派手なベストを毎月一着づつ買って、1年で12着揃えようと思ったんだけど・・・。
まだまだ手が出ない個性的な衣装が2階には揃っているんだよ。
「アワビの貝殻の裏っ側みたいにキラキラと光るジャケット」
「巨大観光船の船長が着用してるみたいな肩章が付いた白いジャケット」
「浅草の古いコントグループ(ビッグボーイズ)がここ一番で着るであろう時代錯誤も甚だしい黄金のジャケット」
洋服を見ているとそういうフレーズがガンガン湧いてくるんだよ!
昔、「浅草橋ヤング洋品店」でさ、ファッションデザイナーのナカノヒロミチさんが身分を隠して、錦糸町の駅前にあるヤクザファッションのお店に洋服を買いに行くっていうのを、やっていた。
オレ達は、試着して出てくるそのナカノヒロミチさんのヤクザファッション姿を見て、すぐ思いついたフレーズで突っ込みを入れてたんだよね。
「出ました!高レートの賭けマージャン屋の常連さん!」
「出ました!後楽園ホール前にたむろするダフ屋の大将!」
「出ました!その売れ残ったチケットを手にキックボクシングのリングサイドに陣取るダフ屋の大将!」
「出ました!ボッタクリヘルスのポン引き!」
「出ました!新宿アルタ前のトルエン売り!」
「出ました!フィリピンパブの置き屋の元締め!」 だとかね。
サカゼンでは、それほどのヤクザファッションこそ影を潜めているが、個性的な衣装がそろっている。
だって、そのステージ衣装以外にも・・・。
生前のがぶり寄りの荒勢&破壊王の橋本真也しか着こなすことはできないであろうマオカラーのコート、PRIDEのリングサイドでリングを見つめる雀鬼・桜井章一会長のモノではないか?と疑う程のストライプのコートなどなど・・・。
吊るされている洋服を見ると思わずフレーズが湧きだしてきて楽しいんだ!
そう、サカゼンには洋服に求められる個性が生きているのだ!
そのサカゼンの中で最大の個性を発揮しているのがホンジャマカの石塚さんのCMでおなじみ、大きいサイズなのだ。
サカゼンの1階入り口にどんと置かれた巨大な人形に着させられた巨大な背広!
これなんだよな!サカゼンの最大の個性は!
地方の民芸うどんやの店頭に置いてある巨大なタヌキの置物とはわけが違う!
「うちはデカイのあるぞ!」と無言で巨大オブジェはアピールしているのだ!
ちなみに、サカゼン新宿店は1階~7階まであり、
7F 大きいサイズのカジュアル
6F 大きいサイズの特選品
5F 大きいサイズの紳士服
4F インポートブランドスーツ
3F インポートブランドカジュアル
2F レギュラーサイズの紳士服
1F レギュラーサイズの紳士洋品・カジュアル
となっている。
7階、6階、5階の大きいサイズショップ。
ふつうの体形のひとももちろん入店OKなので、一度このフロアに入ってみてほしい。
その普通サイズではない洋服の品ぞろえに圧倒されるだろう!
山梨県の上九一色村の「ガリバー王国」は滅びたが、ここサカゼンにガリバー王国は実在したのだ!
「大きいサイズ専門フロアー」の看板には
<身長170センチ~220センチ ウエスト80センチ~160センチ>と記されている。
サイズの幅まで大きい!!
2メートル20センチまでだったらK‐1の巨神兵セーム・シュルトが来ようが、チェ・ホンマンが来店しようが余裕の品ぞろえだ!
サカゼンブランドは「B&TCLUB」という。多分BIGとTALLと言う意味だろう。
サイズは3L~9Lまでで、スーツからカジュアルなものからスポーツウェアーから下着から雑貨まで、なにからなにまで大きいサイズの総てが揃っているのだ!
フロアにはモデルが石塚さんたったひとりという、コーディネートの参考になるフリーペーパーまで置いてある。
スーツを着こなしたダンディな石塚さんから、カジュアルウェアで明るいいつもの石塚さんがタップリ掲載されているこのフリーペーパー。場所柄「デブ専」の方たちがこぞって持ち帰ってしまったのだろうか、最後の1冊を頂いた。
このモデルが同じデブタレントの内山くんだと、いままでのサカゼンと一緒になっちゃうけど、石塚さんっていうセレクトがたまらないよなぁ。
身体が大きいとさぞ洋服が大変だろうと思うんだよね。
でも、サカゼンは何でも揃っているからね。
パッと見ると「スィ~ツ大好き」と公言してテレビに出演している芝田山親方(元横綱・大乃国)着ているみたいな服が並んでたりするんだよな。
カジュアルも豊富だから、石塚さん、伊集院光、松村邦洋のデブタレントのスタイリストさんもサカゼンだろうな。
前に松村が「デブタレはサカゼンですからたまに被る時があって、その衣装前に伊集院さんが着てましたよってスタイリストさんに言われたりするんですよ」なんて言ってたっけ。
デブの方ではなく身長のデカい方の話でいうと、オレがやってるCS放送の番組に若手芸人で2メートルを超える巨体を誇るデコボコ団の阿見って奴が遊びに来てるんだよ。
で、この前の収録の時に「阿見!お前の洋服サカゼンか?」って聞いたら、「玉さん。今日のオレの服、上から下までオールサカゼンです!」だって。2メートルオーバーの男で身近な人間がサカゼン愛用者だったよ。
阿見は「玉さん!サカゼンでこの間感動したんですよ!」って言うからなにを感動したんだ?って聞いたら、
「この前あそこで新しいジャケット買おうと思って、試着させてもらったんですよ、そうしたら店員さんから『これ、ちょっとあんたには大きいかなぁ』って言われたんです!オレ、この背じゃないですか!生まれてこの方、人からちょっと大きいかなぁなんて言われた事がなかったから、嬉しくなっちゃいましたよ」、だって!
そうやって、声をかけてくれる店員さんは、首から長~いメジャーをぶら下げてるんだ。
サイズを測って貰って買うっていうのは、洋服屋の基本なんだよな。
ただサイズを分類して棚に陳列しているだけで客に選ばせて商売している洋服屋が幅を利かせてる世の中。
自分で選んで買うというスタイルもいいが、やはりこうして測って貰って、店員さんとやり取りがあって洋服を買うのが本当だからね。
そのデカさから、人から決してかけられる事がない言葉を人生で初めてかけられ感動したんだろう!
「でも、上には上がいるんだなと思いました。オレなんてまだ小さい存在だって思いましたよ!」だって。
いい話じゃないか!
自分の巨大な身体ゆえに、近所のユニクロでは決して普通の人の様に安易に手に入る事がなかった大きいサイズの洋服。
そんなさまよえる大男達が集まるお店。
それがサカゼンだった!
ここに来れば巨神伝説は本当にあったのだ!
もちろん普通サイズの紳士服の揃えも抜群! インポートカジュアルでもなんでも揃う!
サカゼン凄すぎるよ!
読者には一度来店する事をお勧めするよ!
で、絶滅危惧種だ。
個性ある人間が着る個性ある洋服こそがが絶滅危惧種であるとオレは思うんだ。
現在、日本を席巻している洋服屋さんの皆同じような服を着た人をみてもさぁ、
「出ました!今にもすぐ返り血あびちゃいそう格好だぁ~!」
「出ました!パチンコで勝ってそのまんまの恰好でピンサロに来た男!」
「出ました!オフのホステスと昼間のデートに誘いだした配管工の一張羅!」
「出ました!実話時代!組長代行のオフの姿!」
「出ました!演歌の花道の赤提灯セット前で歌う鳥羽一郎ファッション!」
「出ました!往年のパリーグ近鉄バッファローズの選手の私服!」
こうしたフレーズは決して湧いてきやしないよ。
フレーズが湧いてくるような服を売る店が本当に少なくなってしまった。
パッと見てフレーズが湧く人間と洋品店が絶滅危惧種だよ!
スナックのママが着ているようなどこで売ってるのか分からない豹柄の服じゃないとさ。
いくら家庭的スナックと言っても日本を席巻してる所の服を着ているママさんが出てきたら幻滅だよね。
やっぱり来ている人間の個性を最大限に出す洋服がある店。
そしてその服を着る人間!
このピタッとしたマッチングこそがファッションではないでしょうかねぇ。














