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絶滅危惧種見聞録 開始にあたっての挨拶

絶滅危危惧種:急激な環境変化や乱獲などにより、絶滅に瀕している動物および植物の種。

人間の身勝手さの煽りをくって、種が途絶えてしまい地上から消えた生き物。
そして、今現在、更なる煽りをくらっている最中で、種が途絶えそうになっている生き物。
失ってしまってから、その「ありがたさ」に気がつくのは人間の常だが、絶滅してから気がついて「かわいそう」なんていう人間の身勝手さってのも、これまたない。

しかし絶滅危惧種という定義は動植物だけではなく、人間にも当てはまるんじゃなかろうか?
 
●気のいい大将がやっている居酒屋が、近所にチェーン店の激安居酒屋が出来て潰れてしまった。

●名物おばあちゃんがやっていた魚屋さんが、近所に巨大スーパーが出来て店じまいをしてしまった。

●長い仕事で背中が丸まってしまったおばちゃんがやっているお豆腐屋さんが、リヤカーを引きながらイケメンが売りにくる豆腐屋が近所に出没するようになって消えてしまった。

よくある街の風景だが、そう、彼らは絶滅してしまったのだ。

そういうお店が絶滅すると......

「よう、こんだけ、不景気の中、買ってくれたあんたにゃ、おまけしとくよ!」
「お母さん元気か?」
「いいよ、持ってきな」
「なら、また今度でいいよ」
「いい天気だねぇ」
「日が長くなってきたねぇ」
「あら、ボク!大きくなったわねぇ」
なんて、心から自然と出てくる声が聞こえなくなってしまう。

嗚呼
......街から、人生から、こんな言葉が聞けなくなってしまうってまっぴらごめんだ!

その跡に出来るお店は、味気ないマニュアルを仕込まれたロボットのような従業員が働き、お客はそのロボットの流れ作業のラインを流れるだけになる。なんだかねぇ。

そういえば前に、腹が減ったので牛丼屋に入った事があった。
「いらっしゃいませ。ご注文はお決まりですか?」
「並で卵と味噌汁、あとつゆダクにしてくれる?」
「ハイわかりました」
「もう、つゆダックダクでさ、頼むよヘッヘッへ」
「お客様、つゆダクは出来ますが、
つゆダックダクはできない事になってますから(キッパリ)」
......
出てきた牛丼を黙って食って、黙って金を置いて店を出た。
腹を満たすだけで、心まで満たしてくれなかった。
マニュアルしか仕込まれてないから前後にしか動けず、縦横の動きが来たら対応出来ない。
仕込まれる方は仕方ない。だってそういう決まりなんだから。本当は仕込んでる側の方に「問題アリ」なんだが
......
客の欲求は腹と心まで満たしたい。
店側の欲求はそんな求めに応えてみせるって心意気で、双方が向かい合ってこそのやりとりなのに。

こういう現場に遭っちゃうと、オレは自分のチューニングがズレてしまう。
そんな時、自分のチューニングをあわせる為に行く食堂がある。
そこでのお客さんと店員さんのやり取りに聞き耳を立てる。
「いらっしゃいませ、今日も仕事お疲れ様です」
「いやぁあ~、今日も現場大変でさ」
「そうでしたか。今日はなにしましょう? お寒いですから」
「そうだな、冷じゃなくてぇ」
「燗にしておきますか」
「うん、そうしよう」
「熱燗一本で~す。で、食事のほうは? どうしましょう」
「今日は...う~んBだな。」
「ハイ、B定(定食)ですね。」
「うん」
「注文はいりま~す。B定ご飯大盛りでお願いします」
大盛りなんて発注してないのに、このオーダーを通すホールのお兄さん。
こんな心意気があるやり取り聞くと惚れ惚れしちゃって。ズレてしまっていたチューニングが正常に戻るんだよ。
しかし、先日、この食堂も店を閉めてしまった。そう絶滅してしまったのだ。

そこでのチューニングが出来なくなったオレだが、まだまだ、どうにか絶滅危惧種と触れ合える場所がある。
近所の八百屋のオヤジの店である。
店といってもハイエースを駐車場に停めただけの青空八百屋なんだが、暇があるとそこへ顔を出し、お客さんとのやり取りを見ながらチューニングを正常にするのだ。
八百屋のオヤジは、やってきたお客さんを見て、瞬時に人柄を判断し下ネタ喋ってゲラゲラ笑ったり、洒落がきかなそうなお客さんには真面目に接する。そのオヤジの判断能力、見てるだけでチューニングが正常になる。

八百屋のオヤジのところには、オヤジの友達の75になる鳶の頭も遊びにきていて、ある時、お客さんとオヤジのやり取りを見て、オレにこういった。
やりとりはこうだ。
支払いの時、お客さんの小銭がなくってオロオロしていたら、その人と顔見知りのお客さんが30円立て替えてオヤジに払った。
それを見て頭は
「これなんだよナ。こういうお店なら、またでいいよだの、顔見知りが細かいの立て替えてくれたりするもんナ。スーパーのレジじゃ、こうはいかねぇよナ。行列が伸びるだけでよぅ。うしろに並んでる奴はブーたれるしナ。よくねえよナ」
75年生きてきて出て来た言葉は重みが違うものだ。この頭も絶滅危惧種なんだけど。

現場に味気ない人間がロボットのように増えて効率と利便だけを追求しマニュアル化してしまった商売側と、安くて楽だからそれに乗っかってしまう世の中。これがのさばると「意気」でやってる人間を滅ぼしてしまうだけである。
人間味がある人たちが地上からいなくなる。これ、本当にやばい!
こういう人達と、オレ達の次の世代の人間が触れあえないとしたら、世の中はドンドン味気ない世界になってしまう。
せっかく自分のすぐ側に「意気」で生きている人たちがいるのに、それに気がつかないでツールを介してだけの人間関係しか触れ合えないって本当に「もったいない」。
貴重な人達が絶滅の危機に瀕している事に気がついて欲しい。
白熊もアマミノクロウサギも大変だが人間も大変な危機に瀕しているのだ。

今回、常々オレが感じている事を「意気」に感じてくれたスタッフのお力を借りて連載を始める運びとなりました。
とにかく、目の前の絶滅危惧種に話を聞きたい!
絶滅危惧種の人間の、その声を、生き様を、皆さんに少しでも伝えたい!
そしてこの連載を見てくれて賛同された方は、自分の人生の中に、その人の言葉、生き様、を取り込んで反映してズレてるチューニングを合わせて、次の世代に伝えていって欲しい!
それこそが、絶滅危惧種の人間の「種」を守るという事なのです。
 
どうかよろしく!
 
 
玉袋筋太郎

 

 

白熊もアマミノクロウサギも大変だが人間も大変な危機に瀕しているのだ。
 

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玉袋 筋太郎
たまぶくろ すじたろう