おんなじ3年間をキラキラ活きてる★~涙の数だけ成長してく心温まる物語(4)~
有名選手じゃなくても、高校球児たち、一人一人に『物語』がある。
高校野球にまつわる本当にあった感動秘話をご紹介します。
第4話 『僕たちの甲子園』
「お前にとって理想のキャプテンとはなんだ?」
2年の秋、キャプテンに指名されて間もない僕に部長先生がいきなり聞いてきた。
「・・・・・・」。僕は何も答えれんかった。
先輩たちが部を引退してから、いざキャプテンになったからにはと思ったものの、個性の強いみんなをまとめる難しさ。なんもできんかった。
そんな時、部長先生に呼ばれた。
「お前は何事にも落ち着きが無い。チームをバラバラにしとるのはお前だ。夜、眠れんほど、考えたことあるんか? 今のままじゃキャプテン失格だ。辞めたほうがいい」
とてもショックで、先生の言葉が頭から離れなくて、その夜は眠れんかった。
悩みぬいて、「まず自分の生活態度を変えよう」と考えた。
先生との交換野球ノートも今まで以上に深く考えて書くようにした。
グラウンドでは誰よりも声を出し、練習試合でもなるべく大きい声を出し、盛り上げた。
少しは部員たちに気持ちが通じたんか、ようやく、チームに一体感が生まれ始めて、迎えた九州大会。県予選間際のミーティングの時だった。
「今度の大会を最後に別の高校に転任することになった」![]()
えっ......。
予想もしない部長先生の言葉だった。
キャプテンとしての答えを伝える前にいなくなってしまう。なんでなん――。
僕らはその日から
「試合に勝って、少しでも長く先生と野球をしよう!」
と、よりいっそう真剣に練習に取り組んだ。
そして2009年3月28日――
僕は3回戦の9回裏、3対3の場面に先頭打者として打席に立っていた。
一球目、空振り、二球目も空振り。
自然と体がかたくなっていく。
「タイム!」
ベンチから伝令が来た。
「自分のスイングでいい」
先生からのメッセージ。ふっと、僕はベンチを見た。
みんながベンチで笑っていた。個性の塊だったみんなが僕を応援してくれとる。
(みんながひとつになっている。"全員野球"チームってこれなんや!)
僕は、三球目のストレートを振り切った。ボールはぐんぐん伸びてライトスタンドへ。
(よっしゃー!)
高校野球初のホームランがサヨナラホームラン。
少しでも長く先生と野球がしたい、その想いがバットに伝わったんかな......。
チームはベスト4まで勝ち進んだが、惜しくも敗退......悔しくてしかたなかった。
「先生、キャプテンとはリーダーシップをとって全員で野球をすることです!」
泣きながら先生に話した。最後の最後に答えを出せた。
「お前、言えるようになったな」
そして先生から最後の野球ノートを手渡された。
――「リーダーとは」
答えは見えてきたか?
きっとこれからも考え続けることだろう
しかし、この数ヶ月で良いリーダーに近づいたのは間違いない。
長い人生の中の、ほんの一部でしかない高校野球。
だが、その中には多くの人生訓がある。野球の試合はまさに人生そのものだ。
ピンチ、チャンス、流れ、勝敗......。
少しずつ成長して大人になれ、自ずと結果はついてくる、
2年間ありがとう――
先生がいなくなってしばらくは、心にポッカリ穴が開いたようだった。
でも、いつまでもくよくよしていられなかった。
新監督の下、僕たちは3年最後の夏の大会へ向けて練習に励んだ。
「全員で勝って、全員で甲子園に行こうや」。県予選を明日に控え、みんなにそう話した。
ところが、その日の夜、3年生の保護者たちが急遽学校に集められた。
2時間ほどして、学校から帰ってきた母の口から、
「明日の試合に副キャプテンを含む6人が新型インフルエンザの濃厚接触者ということで出場できなくなった。スタンドで応援するのもダメらしい」と。
全員で勝とうって誓ったのに......眠れないまま僕は朝を迎えた。
-大会初戦の日-
チームのみんなに元気がないアップしていても活気がない。
やっぱりみんなどこか引きずっていた。
全員揃ってこその僕らの野球部。
そこに6人も欠けている。
「ここで負けたら終わりやけん、絶対勝つんや! 勝ってあいつらをグラウンドに立たせてやろう!」
自分も落ち込みそうだった、でもみんなを必死に励ました。
なんとか一生懸命プレーした。ベンチからもスタンドからも大きな声援があった。
でも、相手投手を打ち崩せないまま、試合は0対5で敗退――。
全員をグラウンドに立たせられへんかったことが悔しかった。
マネージャーもスタンドの父兄もみんな泣いていた。
帰り支度をしている時、副キャプテンから電話がきた。
「ごめん。お前らをグラウンドに立たせてあげられんかった」
「謝るなや、お前らは充分、自分たちの野球をしたんや。いいんや。」
こらえていた涙がどっと溢れた。電話越しの向うからも泣き声が聞こえてきた。
今までコイツが泣いたことなんて見たこともなかったのに......。
「わるい。ごめん。ごめん......」。それしか言えんかった。
そして学校に着いた僕たちを先生方が拍手で迎えてくれた。
試合前の夜、僕たちの前で大粒の涙をこぼしてまで励ましてくれた校長先生や教頭先生。
その心づかいがすごくうれしかったし、同時に申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
「出られなかったヤツらの家に行こう! このまま、しんみり落ち込んでるより最後まで俺たちらしくいこうや」
少しでも気持ちを切り替えようと、マネージャーを含めた全員で、出られなかった部員の家に行くことにした。
玄関先には、みんないつもの笑顔で出てきた。僕らはふざけて「ごめんな、ごめんなっ!」って、いつのまにかいつもの明るい僕たちに戻っていた。
その時。
「もう一度試合がやりたいな」
誰かが言った。
「そや、みんなで最後に試合をやろう!」
"全員野球"
いつのまにかみんなしっかり感じてくれとった。
部員がバラバラで、キャプテンとして悩んだ日々がはるか昔に感じられる。
3年生部員全員での紅白戦。高台のグラウンドにメンバー紹介のアナウンスが響く。
最後の公式戦のユニフォームを着た。背番号とか、レギュラーとかは全く関係ない。
それぞれが好きなポジションについた。みんなが笑ってる。
スタンドを見ると、応援の父兄もみんな笑っていた。
楽しかったし、うれしかった。
キラキラと球場全体が輝いていた。
「キャプテンとは、リーダーシップをとって全員で野球をすることです」
転任してしまった部長先生に、僕が泣きながら出した答え。
最後に、もう一度"全員野球"ができて、やっとなにかが吹っ切れた。
そしてそれが僕たちの甲子園になった――。














