1月29日(金曜日)
「最近、評判悪いですよ」
社のトイレで若い衆に言われた。
暮れのことじゃ。
持って生まれた性格と、
人付き合いの悪さに起因しておる。
そう開き直ろうと思っておった。
じゃが、聞けば、
今回の「評判の悪さ」は健忘が原因らしい。
とにかく社員の顔や名前が覚えられぬ。
昨年夏にふたつの事業部が合流し、知らぬ顔が増えた。
お隣には親会社のビルもある。
ワシのキャパを超えおった。
町ですれ違っても気づかない。
社内で話していても名前が浮かばず、
そのまま話し終わることもある。
相手にしたら、たまったものではないのぉ。
『なんでこんな爺と一緒に働かなければならないのか』
それではいかん。
というわけで、挨拶作戦に出た。
町で、エントランスで、エレベータで、
『それらしい』人と目が合ったら、
「あっ、どうも」と声をかける。
ほとんどのかたが「どうも」と返してくれる。
サンクスで何度か挨拶をするうちに
顔見知りになったお兄さんは、
フェラーリの販売店の人だったなんてこともある。
それでも、ワシにしたら上出来じゃ。
気分がええ。
記憶力は脳の働きだけでなく、
心の働きも絡む気がする。
湯船に浸かり、
仕事のことなど頭からすっかり忘れたつもりでも、
気がつくと、気に入らぬヤツの顔を思い浮かべてたりする。
これは脳云々というより、
心に記憶が定着しているように思う。
挨拶作戦は、
それとは反対に
気分のよさが、ワシに人の顔を覚えさせてくれた。
「評判が悪い」と教えてくれた若い衆に感謝。
そして、オメーの面は一生忘れねーぞっ!
(桟)
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